関東から九州まで80店舗を超える美容室・理容室を手掛けた実績を基に、新築・リニューアルに留意しておくべき8つのポイントを解説します。
LEDの光は直線的で影がでやすい。
天井から真下に光を当てるダウンライトは美容室に適さない照明です。
○手元が暗くなり、襟足も見えにくいのでスタイリストはテクニックを十分に発揮できない。
○お客様の顔にシャドウが出てしまい老けて見え、長い時間、不快な思いをさせてしまう。
LEDは目元、鼻の影、胸に影が著しく出ていて一目瞭然です。
ダウンライトでは手元や襟足が暗くなるのは必然です。
○LED照明の光色は5種類
昼光色、昼白色、白色、温白色、電球色
この中でカラーリングにベストなのは「昼白色」です。
白色はわずかにオレンジ色が重なりますが問題ありません。但し、照明器具・電球の製品は極めて少ない。
◎昼白色はわずかに青みが重なるものの用途が広く多種多様な照明器具が揃っています。
▲昼光色は青みが髪や顔に重なり、▲温白色、電球色はオレンジ色が重なるのでカラーリングの正確さに欠けます。
○店内が白い照明で統一されると店内が温かみに欠けると感じられた場合
天井の4隅を電球色や温白色で照らすと温かみのある雰囲気が生まれる。この光はセット席に届かないのでカラーリングに影響はなくインテリアとして効果的です。
○インテリアに精通しているオーナーや店長は内装に拘りたいところですが、光が壁に反射すると壁の色が光となってお客様に注がれます。これではカラーリングに困るので壁は白がベストでアイボリーまでは許容されます。
○どうしてもインテリアに色彩を取り入れたい場合は壁の腰から下の高さまでに限定されます。
○人工照明であるLEDは太陽の光とは異なり、虹に現れる7色の明るさは均一ではありません。
店内でお客様のご希望通りに染め上げても、外に出ると違った色の見えてしまい「ハッ!・・・」とされたご経験はこれが原因でした。
店内の照明が太陽の光にどの程度近いかを示す数値は国際標準で定められています。一般的に「演色性能」と呼ばれ太陽を100としてRa80(アールエー80)とかRa90(アールエー90)で表されます。照明器具や電球のパッケージに表記されています。パッケージに記載がなければネットに製品名を入力し検索して下さい。Ra80未満は安いからと言って手を出さないようご注意!
○従来の蛍光灯(昼白色)の演色性能はRa83でした。この数値はカラーリングの最低ラインです。
美容室の照明はRa90以上が必要です。
太陽は7色の光が同じ高さ(エネルギー)を持っているので色を正確に見ることができます。
太陽のスペクトル(光の色彩の分布)
演色計で測定してみると太陽はRa100
人工照明である蛍光灯やLEDは器具毎に色の成分が異なっています。
LED照明は全て青色LEDで作られているので元々は赤の成分は有りませんでした。そこで照明メーカーは赤の成分を大きくするため開発競争をし、今では一般的なLEDはRa83です。
初期のLEDはRa80未満でしたので暖色系のカラーリングに正確さを欠いていたのはこれが原因でした。
◎美容室はRa90以上の演色性能の照明を選ぶ必要があります。
全く同じマネキンで照明は昼白色、左はRa80、右はRa96です。
肌の色、リンゴの色はこれほど異なって見えます。
お客様のお顔も同様の色にミラーに映ります。お客様が幸せな時を過ごされるのはどちらでしょうか。
○美容室のレイアウトはお店により様々。どのレイアウトにも対応するには複数の種類から照明器具を選び、立体的に配置することが大切です。
・天井に取り付ける長方形や四角い基本的な照明(ベース照明):店内を均一の明さにする。
・天井から吊りさ上げるペンダント照明:セット席を上方から柔らかな光が包み込む効果がある。光はお椀状の内側で反射して広い範囲に拡散し広がる。
・天井にレールを取り付け自由な角度で照すスポットライト:斜め横からの光が細やかなカットを可能にします。
○複数の照明を上手に組み合わせることで影を生じないで作業性に優れ、お客様に喜ばれる空間が生まれます。 それぞれの特徴を生かし、店内のレイアウトに合った照明器具を選ぶことが大切です。
〇店内の雰囲気をお好みのデザインに変える照明器具
・ペンダント照明は様々なデザインが提供されています。
大きさ、個性的な曲線、カラフルな色彩は目に触れることが多くインテリアとして魅力的です。
・スポットライトはレールの随所に取り付けられ、任意の角度でセット席を照らすことができ個室感を演出します。
・クラシカルなインテリアを好まれる方には壁にブラケット照明が効果的である。
個性的なガラスの造形とオレンジ色の照明は目線の高さにあり室内の意匠として魅力的。
光が電球色になるのでセット式に光が届かない離れた場所に配置すると店内が奥ゆかしく優雅に見えます。
セット席が6席以上になると3席を2列に並べて対照的にレイアウトされるケースが多い。
店内の中央にミラーを背中合わせにセット席を配置すれば良いのですが、両側の壁にミラーを配置した場合、反対側の照明が映り込みミラーに映り込み、お客様に眩しい思いをさせてしまいます。
スポットライトがミラーに映り込まないようなセット席の配置を工夫する必要があります。
照明器具はそれぞれに異なった光の広がりと届く距離が設計されています。特にスポットライトは狭い範囲で遠くへ光が届くよう設計されていて美容室に適した照明と言えますが、このような弊害が生じることも配慮が必要です。
映り込まない対策としては
◎壁に向いたレイアウトでもセット席の位置をジグザグにずらすことで映り込まないように工夫をします。
◎ミラーを壁面に配置しないで中央に向い合わせにする。
球切れした場合、本体と球の一体型は高価な器具を交換しなければならず、場合によっては電気工事を伴います。一方、球交換が容易な照明器具は球切れしても電気店で購入し自分で取り換えできます。しかもLED電球の性能は日進月歩、将来、更に性能の優れたLED電球が発売されれば取替も自在です。
LEDの寿命は40,000時間、1日11時間使用しても10年は取替不要ですが途中で切れないとは限りません。
◎LED照明は光の広がる角度や距離が個々に異なるので事前に明るさを3次元でシミュレーションし、お客様の頭部に四方八方から最適な明るさが注いでいるかを確認することが大切です。
照明メーカーから器具の性能はデジタルデータで提供されており、ネットでダウンロードすることができます。このデータを照度シミュレーションのアプリに入力すれば明るさを3次元で見ることができます。事前にシミュレーションすることで失敗を防げます。
(2次元のアプリもありますが美容室は立体的な明るさの確認が必要なので参考になりません)
この例では、いずれのレイアウトもお客様のトップの照度は300ルックスであり、目標の500~700ルックスには不足しています。
天井の高さ、壁までの離れ、セット席の間隔などの条件で、どの照明器具をどのように配置すれば明るくて影が出ないセット席となるかを繰り返しシミュレーションします。その結果、
スタイリストにとって満足のいく作業空間とお客様にとって心地よい空間が生まれます。
(明る過ぎると眼は光の取り入れを少なくしようと「絞り」続けるので疲れ目の原因となります。1000ルックス未満を推奨します)
あなたのお店に似たレイアウトがありましたらご参考に。
ハピネス照明デザイン事務所
代表 椎原敏次(シイハラ トシジ)
照明コンサルタント・照明士
インテリアコーディネーター
色彩コーデネーター1級
二級建築士
エネルギー管理士
建築物環境衛生管理技術者
